飲食店開業までのスケジュール|開店日から逆算する12か月カレンダー

開業スケジュールを「やることリスト」として作ると、後半で必ず破綻します。期限が法令で決まっている工程と、自分の裁量で動かせる工程が混ざっているからです。
正しい作り方は逆順です。開店日を決める → 期限が固定されている届出を先に置く → 残りをその前後に配置する。この順で組むと、どこに余裕がなく、どこが遅れても大丈夫かがはっきりします。
期限が固定されている工程
まず、動かせないものを押さえます。
| 手続き | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可の申請 | 保健所 | 施設完成予定日の 10 日前ごろまで |
| 防火対象物使用開始届 | 消防署 | 使用開始の 7 日前まで |
| 防火管理者の選任届 | 消防署 | 収容人員 30 人以上の場合。使用開始まで |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届出 | 警察署 | 午前 0 時以降も酒類を提供する場合、営業開始の 10 日前まで |
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 税務署 | 開業の日から 1 か月以内 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | 開業の日から 2 か月以内 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 従業員を雇う場合、開設から 1 か月以内 |
このうち開店日より前に済ませなければならないのは上の 4 つです。 税務署への届出は開業後でも間に合いますが、青色申告承認申請書は期限を過ぎるとその年は青色申告ができなくなるため、開業届と同時に出すのが確実です。
開店日から逆算する 12 か月カレンダー
物件の状態(スケルトン/居抜き)や規模で前後しますが、標準的な逆算は次のようになります。
開店 12〜10 か月前:コンセプトと数字の骨格
- 業態・ターゲット・客単価を決める
- 損益分岐点を先に計算する(固定費 ÷ 1 人あたり粗利 = 1 日に必要な客数)
- 必要な自己資金と調達額を出す
ここで「1 日に何人来れば黒字か」を出しておくと、後の物件選びで席数と家賃の判断がぶれません。コンセプトを言葉だけで決めて数字を後回しにすると、物件を見た勢いで身の丈を超えた契約をしがちです。
開店 10〜8 か月前:資金調達の準備
- 事業計画書を作成する
- 日本政策金融公庫や金融機関へ相談する
- 自己資金の証跡を整える
融資の相談は物件契約の前に始めてください。 物件を押さえてから融資が下りないと、保証金を失います。詳しくは 飲食開業の際に必要となる資金の集め方 を参照してください。
開店 8〜6 か月前:物件探し
- 立地・家賃・席数・厨房の広さを条件化する
- 排気経路、ガス容量、電気容量、給排水を確認する
- 深夜営業をするなら、その住所で可能かを警察署に確認する
物件は「気に入ったら即決」を迫られる場面が多いため、確認項目をチェックリスト化して内見に持っていくことを勧めます。契約後に判明する制約は、ほぼすべて工事費か営業時間の制限として跳ね返ります。
開店 6〜4 か月前:設計と工事の契約
- 内装業者を選定し、図面を作る
- 図面段階で保健所に相談する(シンクの数、手洗い設備、区画)
- 厨房機器を選定・発注する
保健所への事前相談を飛ばすと、工事完了後の検査で指摘を受け、作り直しになります。設計段階の相談は、費用をかけずにできる手戻り防止策です。
開店 4〜2 か月前:工事と採用
- 内装工事を着工する
- スタッフを募集・採用する
- 仕入先を選定し、取引条件を決める
- メニューを確定し、原価を計算する
この時期が最も遅れやすい区間です。 工事の遅延、採用の難航、機器の納期はいずれも自分では制御しきれません。開店日には 2〜3 週間の余裕を持たせておいてください。
開店 1 か月前:届出と検査
- 飲食店営業許可を申請する(施設完成予定日の 10 日前ごろまで)
- 保健所の施設検査を受ける
- 防火対象物使用開始届を提出する(使用開始 7 日前まで)
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出を提出する(該当する場合、10 日前まで)
開店 2 週間前:試運転
- スタッフ研修とオペレーション確認
- プレオープン(知人招待・限定営業)で調理と提供の時間を実測する
- 予約・決済・POS の動作確認
プレオープンの目的は集客ではなく、ピーク時に何分で提供できるかを測ることです。ここで回らないと分かれば、メニューを絞る余地がまだ残っています。
開店後 1〜2 か月:税務の届出
- 個人事業の開業・廃業等届出書(1 か月以内)
- 所得税の青色申告承認申請書(2 か月以内)
- 給与支払事務所等の開設届出書(従業員がいる場合、1 か月以内)
居抜きとスケルトンでスケジュールはどう変わるか
同じ規模の店でも、物件の状態で準備期間は 3〜4 か月変わります。
| 居抜き | スケルトン | |
|---|---|---|
| 設計・工事の期間 | 1〜2 か月 | 3〜4 か月 |
| 厨房機器 | 前店舗の設備を流用できる場合がある | 一式を新規に選定・発注する |
| 保健所の要件 | 既存設備が現在の基準に合うか要確認 | 最初から基準に合わせて設計できる |
| 想定外の発生 | 造作の劣化、設備の故障 | 解体後の構造・配管の問題 |
| 全体の目安 | 6〜8 か月 | 10〜12 か月 |
居抜きは「早くて安い」とは限りません。 前店舗の設備が現在の基準を満たしていなかったり、業態が違って動線が合わなかったりすると、結局は作り直しになります。譲渡設備の状態を、契約前に専門家と一緒に確認してください。
とくに厨房機器は、見た目が使えても内部が寿命に近いことがあります。開業直後に主要機器が故障すると、営業を止めて緊急で入れ替えることになり、想定していない支出が最も苦しい時期に発生します。
遅れやすい 3 つの工程
実務で開店日がずれる原因は、ほぼこの 3 つに集約されます。
- 内装工事: 解体後に想定外の状態が判明する(配管の劣化、構造上の制約、想定外の補強)。スケルトン物件ほどリスクが大きくなります
- 厨房機器の納期: 特注品や輸入機器は数か月かかる場合があります。機器の選定は工事着工より前に始めてください
- 採用: 求人を出してから戦力になるまで、募集・面接・研修で 1〜2 か月かかります。開店直前の採用は現実的ではありません
この 3 つには、それぞれ独立に余裕を持たせてください。 全体で 2 週間のバッファを取っても、3 つが同時に遅れれば足りません。
開店日を決めるときの注意
開店日を先に告知してしまうと、遅れたときに信用と広告費の両方を失います。告知は保健所の検査に通ってからにするのが安全です。
季節性も考慮してください。歓送迎会や忘年会の需要期に合わせたい場合、その 1 か月前には安定稼働している必要があります。繁忙期の初日に開店するのは、最も難しい選択です。 オペレーションが固まっていない状態で最大の客数を迎えることになり、最初の口コミが最悪の条件で書かれます。
スケジュール表の作り方
紙のリストではなく、次の 3 列を持つ表で管理してください。
| 列 | 意味 |
|---|---|
| 期限 | 法令で決まっているか、自分で決めたか |
| 依存 | この工程が終わらないと始められない工程はどれか |
| 担当 | 自分・内装業者・行政書士・不動産会社のいずれか |
「依存」の列が重要です。 保健所の検査は工事完了に依存し、工事完了は機器の納品に依存します。この連鎖を書き出しておくと、1 つの遅れがどこまで波及するかが事前に見えます。
担当を書き分けておくと、自分が動かないと進まない工程と、待つしかない工程が区別できます。待ちの工程が多い時期に、自分で進められる作業(メニュー設計、原価計算、採用準備)を寄せると全体が短縮できます。
開業後に効いてくる準備
開店してからの 3 か月は、想定と実績のズレが最も大きく出ます。準備段階で次の 2 つを決めておくと、開業後の判断が速くなります。
- 記帳の方法(自分でやるか、外部に任せるか)
- 月次で見る数字(原価率・人件費率・1 日あたり損益分岐点客数)
開業直後は営業だけで手一杯になり、記帳は後回しになりがちです。数か月分をまとめて処理すると、当時の状況を思い出せず精度が落ちます。REDISH では飲食店向けの記帳代行と月次の数値可視化を提供しています(税務申告は飲食専門の提携税理士法人が担当します)。
よくある質問
開業準備はどのくらいの期間が必要ですか?
物件がスケルトンの場合、コンセプト決定から開店まで 10〜12 か月を見ておくと余裕があります。居抜きで大きな工事が不要なら、6〜8 か月で進むこともあります。
何から手を付ければよいですか?
損益分岐点の計算です。1 日に何人来れば黒字になるかを先に出しておくと、物件の家賃と席数の判断がぶれません。
融資の相談はいつ始めますか?
物件を契約する前です。物件を押さえてから融資が下りないと、保証金を失います。
保健所への相談はいつがよいですか?
図面ができた設計段階です。工事完了後に指摘を受けると作り直しになります。
開店日はどのくらい余裕を持たせるべきですか?
2〜3 週間です。工事・機器納期・採用の 3 つが同時に遅れる可能性を見込んでください。
開店日の告知はいつ出せばよいですか?
保健所の検査に通ってからです。検査前に告知して遅れると、信用と広告費の両方を失います。
開業届はいつまでに出しますか?
開業の日から 1 か月以内です。青色申告承認申請書は 2 か月以内のため、開業届と同時に提出するのが確実です。









