カフェバー開業ガイド|昼カフェ・夜バーで変わる許可と届出

昼はカフェ、夜はバーとして営業する「カフェバー」は、手続きの上ではカフェとバーのどちらかではなく、両方の要件を満たす必要がある業態です。とくに次の 2 つで扱いが変わります。
- 午前 0 時以降に酒類を提供するか → 警察署への届出が必要になる
- 接待をするか → 風営法の許可が必要になり、要件が一段重くなる
この 2 つを先に決めないまま物件を契約すると、「その場所では深夜営業ができない」「この内装では許可が下りない」という手戻りが起きます。順に整理します。
前提:喫茶店営業の許可はもうない
まず古い情報に注意してください。かつては「喫茶店営業」と「飲食店営業」が別の許可に分かれており、酒類を出さないカフェは喫茶店営業で足りるとされていました。
2021 年 6 月 1 日施行の改正食品衛生法により、喫茶店営業の許可は廃止され、飲食店営業に一本化されています。 現在は、カフェでもバーでもレストランでも、保健所から受けるのは同じ「飲食店営業許可」です。
つまり 業態によって「許可の種類」が変わるのではなく、追加で必要になる「届出」が変わると理解するのが正確です。
業態別に必要な手続きの違い
| 手続き | カフェ(酒なし) | レストラン | バー・カフェバー |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業許可(保健所) | 必要 | 必要 | 必要 |
| 食品衛生責任者(1 名以上) | 必要 | 必要 | 必要 |
| 防火管理者(収容人員 30 人以上) | 該当時 | 該当時 | 該当時 |
| 防火対象物使用開始届(消防署・使用開始 7 日前まで) | 必要 | 必要 | 必要 |
| 深夜酒類提供飲食店営業開始届出(警察署) | 不要 | 午前 0 時以降に酒類を出すなら必要 | 午前 0 時以降に酒類を出すなら必要 |
| 風俗営業許可(接待を伴う場合) | 不要 | 不要 | 接待をするなら必要 |
「バーだから深夜の届出が要る」のではありません。 基準は業態名ではなく、午前 0 時以降に酒類を提供するかどうかです。0 時に閉めるカフェバーなら届出は不要ですし、逆に 0 時を越えて酒を出すレストランなら届出が必要になります。
なお、よくある誤記として「深夜酒類提供飲食店営業許可」という表記を見かけますが、これは許可ではなく届出です。審査を経て与えられるものではなく、要件を満たしたうえで届け出る手続きになります。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出の実務
午前 0 時から午前 6 時までの時間帯に酒類を提供する営業を続ける場合、営業開始の 10 日前までに、店舗を管轄する警察署を経由して公安委員会へ届け出ます。
実務上つまずきやすいのは次の 3 点です。
- 場所の制約: 用途地域や各都道府県の条例により、住居系の地域では深夜営業ができない場合があります。物件を決める前に、その住所で深夜営業が可能かを警察署へ確認してください
- 構造の要件: 客室の見通しを妨げる高さの設備を置かない、客室の床面積、照度など、店舗の構造に関する要件があります。内装が固まってから判明すると作り直しになります
- 図面の添付: 届出には店舗の平面図・求積図などが必要です。設計段階で行政書士や内装業者と共有しておくと手戻りが減ります
確認の順序が重要です。 物件 → 内装設計 → 届出の順で進めると、場所と構造の両方で引っかかる可能性が残ります。物件の内見段階で「この住所で深夜営業ができるか」を先に潰しておくのが安全です。
「接待」をすると風営法の世界に入る
カフェバーで最も判断を誤りやすいのがここです。接待を伴う営業をする場合、深夜の届出ではなく風俗営業の許可が必要になります。
接待にあたるかどうかは、特定の客の隣に座って継続的に会話の相手をする、酒を注いで回る、客と一緒にカラオケを歌うといった行為が典型例とされます。一方、注文を受ける、料理や酒を運ぶ、カウンター越しに会話をするといった通常の接客は接待にあたりません。
カウンター越しの会話は接客、席に着いての相手は接待という線引きが実務上の目安になります。カフェバーは客との距離が近い業態のため、「常連さんの隣に座って話し込む」という営業スタイルが自然に発生しやすく、意図せず境界を越えるリスクがあります。
風俗営業の許可が必要になると、営業所の構造・設備の要件、営業時間の制限、営業所の場所(学校や病院からの距離制限など)といった条件が加わり、要件は一段重くなります。接待をする方針なら、物件探しの時点から前提を変えて動く必要があります。
酒を「出す」のと「売る」のは別
もう 1 つ混同されやすいのが酒類販売業免許です。
- 店内で開栓して提供する(グラス・ボトルサービス): 飲食店営業許可の範囲内で行えます。酒類販売業免許は不要です
- 未開栓のボトルを持ち帰り用に販売する: 酒類の小売にあたるため、税務署から一般酒類小売業免許を受ける必要があります
カフェバーでは「気に入ったワインをそのまま買って帰りたい」という要望が出やすく、その場の判断で未開栓ボトルを売ってしまうケースがあります。免許なしで販売すると酒税法違反になります。 物販を視野に入れるなら、開業準備の段階で免許の取得を検討してください。
昼と夜を 1 つの店で切り替える設計
カフェバーで意外と負担になるのが、昼と夜の切り替えそのものです。手続きの話ではありませんが、開業後の人件費に直結します。
- 照明: 昼は明るく、夜は落とす。調光できる回路になっていないと、後付けの工事が必要になります。深夜営業をする場合は客室の照度に関する要件もあるため、調光の下限にも注意が必要です
- 音響: 昼の BGM と夜の BGM でボリューム帯が違います。スピーカーの配置を昼基準だけで決めると、夜に音が届かない席が出ます
- 什器: テーブル配置を昼夜で変える設計にすると、切り替えのたびに人手と時間がかかります。動かす前提なら軽量な什器を選ぶ
- メニュー: 昼夜で完全に別メニューにすると仕込みが二重になります。共通の仕込みから展開できる構成にしておくと、廃棄と工数の両方を抑えられます
切り替えに毎日 30 分かかるなら、月に 15 時間の人件費が固定で乗ります。 設計段階で「切り替え作業をどれだけ減らせるか」を検討しておく価値があります。
税務まわりの届出
開業時には税務署への届出も必要です。手続き自体は業態を問いません。
| 書類 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書 | 税務署 | 開業の日から 1 か月以内 |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 税務署 | 開業の日から 2 か月以内 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 税務署 | 従業員を雇う場合、開設から 1 か月以内 |
青色申告承認申請書は期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。開業届と同時に出しておくのが確実です。
昼と夜で数字を分けて見る
カフェバーは、昼と夜で客単価も原価率も人件費率もまったく違う 2 つの商売を 1 つの店舗で回す業態です。合算した月次だけを見ていると、片方の赤字がもう片方の黒字に隠れます。
最低限、次の 3 つは時間帯別に分けて把握してください。
- 売上と客数(昼/夜)
- 原価率(昼/夜。ドリンク主体の夜は原価率が下がりやすい)
- 人件費(仕込み時間をどちらに配賦するか決めておく)
昼が集客のためだけに存在していて利益が出ていないのであれば、それは意図した投資なのか、それとも見えていなかった損失なのか。分けて記録していなければ、この問いに答えられません。
開業直後は営業と仕込みで手一杯になり、記帳が後回しになりがちです。REDISH では飲食店向けの記帳代行と月次の数値可視化を提供しています(税務申告は飲食専門の提携税理士法人が担当します)。
開業の全体スケジュールは 初心者向け:飲食店開業までのスケジュール作成ガイド、資金面は 飲食開業の際に必要となる資金の集め方 を参照してください。
よくある質問
カフェバーは「カフェ」と「バー」のどちらで届出しますか?
どちらでもありません。保健所の飲食店営業許可は共通で、そのうえで午前 0 時以降に酒類を提供するなら深夜酒類提供飲食店営業開始届出を追加します。業態の呼び方は手続きに影響しません。
0 時までの営業なら警察署への届出は不要ですか?
不要です。届出が必要になるのは、午前 0 時から午前 6 時の時間帯に酒類を提供する場合です。
深夜酒類提供飲食店営業開始届出はいつまでに出しますか?
営業開始の 10 日前までです。図面の添付が必要なため、内装設計の段階から準備しておくと間に合います。
どこからが「接待」になりますか?
特定の客の隣に座って継続的に会話の相手をする、酒を注いで回るといった行為が典型例です。カウンター越しの会話や、注文・配膳といった通常の接客は接待にあたりません。判断に迷う営業スタイルなら、事前に警察署へ確認してください。
気に入ったボトルをお客様に持ち帰り販売できますか?
未開栓のボトルを販売するには、税務署から一般酒類小売業免許を受ける必要があります。免許なしでの販売は酒税法違反になります。
喫茶店営業許可は取らなくてよいのですか?
2021 年 6 月 1 日施行の改正食品衛生法で喫茶店営業の許可は廃止され、飲食店営業に一本化されました。現在は飲食店営業許可のみを取得します。
物件を決める前に確認しておくことは何ですか?
その住所で深夜営業が可能かどうかです。用途地域や条例によって制限がかかる場合があり、契約後に判明すると保証金と設計費の両方が無駄になります。









