飲食店に強い税理士を選ぶポイントは?

結論 飲食店に強い税理士かどうかは、(1) 飲食業の支援実績(原価・人件費・多店舗の理解)、(2) クラウド会計・POS 連携への対応(記帳の自動化)、(3) 相談のしやすさ(連絡手段・レスポンス)の3点で見てください。この3つは面談の場で確認できます。以下では、それぞれについて何を質問し、どんな回答なら安心か/注意が必要かを具体的に示します。
この記事は「探し方」より先に「判断軸」が欲しい方向けです。紹介ルートや窓口の具体手順は 税理士の探し方8選 にまとめてあります。
軸① 飲食業の支援実績
業種を問わない税理士と、飲食を多く見ている税理士とでは、同じ試算表を見ても出てくる助言の具体性が変わります。飲食は原価と人件費の合計(FL 比率)で利益が決まる構造がはっきりしており、60%以内が一つの目安とされます。この感覚が共有できているかどうかが最初の分かれ目です。
面談で聞く質問と、回答の読み方
| 質問 | 安心できる回答 | 注意したい回答 |
|---|---|---|
| 「うちの業態だと原価率は何%くらいが目安ですか」 | 業態(居酒屋・ランチ主体・テイクアウト等)で数字が変わる前提で答える | 「30%です」と業態を聞かずに即答する |
| 「飲食店の顧問は何件くらいお持ちですか」 | 件数と、規模感(個人店中心か法人・多店舗か)を具体的に答える | 「たくさん見ています」で件数が出てこない |
| 「アルバイトの入退社が多いのですが」 | 給与・源泉の実務まで話が及ぶ | 「それは社労士の領域です」で終わる |
| 「2店舗目を出すときは何から相談すればいいですか」 | 資金・人・帳簿の順で段取りが出てくる | 「そのときに考えましょう」 |
飲食業は黒字の企業がおよそ 35.7%、約7割が赤字という統計もある業種です(約7割が赤字…飲食店の現実)。数字の目安を共有できる相手かどうかは、申告の正確さ以上に経営に効きます。
軸② クラウド会計・POS 連携
飲食店は取引件数が多いため、freee やマネーフォワードと POS レジ・ネットバンキングを連携させると、記帳の工数を大きく減らせます。ここで確認すべきは「対応していますか」ではなく、どこまで伴走してくれるかです。
- 連携の設定を誰がやるか(店側で設定してくださいと言われるのか、初期設定まで一緒にやるのか)
- いま使っている POS・決済に対応しているか(機種名・サービス名を出して確認する)
- 連携できない部分をどう埋めるか(手書き伝票、現金売上、まとめ請求の仕入先)
- 領収書の渡し方(郵送・持参のみか、写真送付を受け付けるか)
連携が入ると、入金明細と売上の突合や仕入の入力といった、件数の多い作業が自動化されます。逆に、紙の受け渡しが前提の運用では、営業時間中に事務所へ行く時間が毎月固定で発生します。記帳の速さは、連携の可否より運用の設計で決まります。
軸③ 相談のしやすさ
仕込み・ランチ・ディナーの合間に質問できるかどうかは、契約後の満足度を最も左右します。メールのみ・月1回の面談のみだと、疑問が溜まったまま数か月が過ぎ、結果として判断が遅れます。
確認しておくと安心なのは次の点です。
- 連絡手段(電話・メール・チャット・LINE のどれが使えるか)
- 返信の目安(当日中か、2〜3営業日か)
- 窓口が誰か(担当者は固定か、担当と有資格者は別か)
- 相談の回数制限と追加料金(顧問料に何回まで含まれるか)
- 記録の残り方(口頭のみか、あとから見返せる形で残るか)
「聞きにくい」が続くと、判断に必要な確認を省くようになります。これは料金より重いコストです。
3軸の重みは、店の状況で変わる
3つとも大事ですが、優先順位は状況で変わります。
| 店の状況 | 最優先の軸 | 理由 |
|---|---|---|
| 開業前・開業直後 | ① 実績 | 創業計画と初期の届出で、業態理解の差が最も出る |
| 1店舗・アルバイト雇用あり | ③ 相談のしやすさ | 給与・シフト・仕入の細かい判断が日常的に発生する |
| 現金比率が高い | ② 連携+運用設計 | レジ差異と現金管理のルールづくりが効く |
| 2店舗目・法人化を検討 | ① 実績 | 多店舗の管理会計と法人化の判断に経験が要る |
| 数字は自分で見たい | ② 連携 | 締めが早いほど自分で見る意味が出る |
面談前チェックリスト
- 飲食店の支援事例と件数を聞いた
- 利用中の POS・決済・会計ソフトの名称を伝え、連携可否を確認した
- 連絡手段と返信の目安を確認した
- 月次で見る数字(試算表・FL)を、どう説明してもらえるか確認した
- 料金に含まれる業務範囲を書面で確認した(費用の相場)
- 担当者と、実際に申告を行う有資格者が誰か確認した
契約前に書面で確認したい5項目
口頭で合意しても、後から食い違いが出やすいのは次の5点です。見積書または契約書の記載を確認してください。
- 月額に含まれる範囲(記帳の枚数上限、月次面談の有無と回数)
- 決算・申告料が別かどうか(別なら概算の金額)
- 年末調整・法定調書などの季節業務の扱い
- 税務調査に立ち会う場合の費用
- 資料の受け渡し方法と締め切り日(いつまでに何を渡すと、いつ試算表が出るか)
とくに5番目は、契約後の体験を決めます。「毎月10日までに領収書を送れば、20日に試算表が出る」まで決まっていれば、月次は回ります。
よくある落とし穴
- 安さだけで選ぶ。相場より安い場合は、記帳枚数の上限や、業種非特化、調査対応が別料金といった条件が付いていることがあります。含まれる範囲で比較してください。
- 担当者と有資格者を混同する。窓口は担当者でも、申告に責任を持つのは税理士です。誰が何を担うのかを最初に確認しておくと、あとで揉めません。
- 紹介サービスの仕組みを知らずに使う。紹介サービスは便利ですが、掲載や紹介の仕組みは各社で異なります。手順の整理は 税理士の探し方8選 を参照してください。
- 切り替えのタイミングを逃す。合わないと感じた場合、期の途中よりも決算・申告が終わった直後が最も引き継ぎやすいタイミングです。会計データと過去の申告書控えを受け取れるかを、切り替え前に確認しておきます。
オンライン中心か、対面中心か
もう一つの分かれ目は、やりとりの形式です。どちらが優れているという話ではなく、店の営業スタイルとの相性で決まります。
| 対面中心 | オンライン中心 | |
|---|---|---|
| 向いている店 | 経営者が数字に不慣れ、じっくり説明を受けたい | 営業時間が長く、日中に外出しづらい |
| 資料の渡し方 | 持参・郵送が基本 | 写真送付・クラウド共有 |
| 相談のタイミング | 面談の日にまとめて | 疑問が出たその場で |
| 注意点 | 移動と日程調整の時間が毎月かかる | 文章で伝える手間があり、複雑な相談は打合せを別途設定する |
営業時間が長い業態ほど、「事務所へ行く時間」そのものが継続の障害になります。逆に、数字の読み方から教わりたい段階では、対面のほうが理解が早いこともあります。契約前に、繁忙期の1か月をどう回すかを具体的に想像してから決めてください。
開業前に選ぶときの注意
開業前は、まだ帳簿も売上もありません。この段階では実績の見方が少し変わります。
- 開業支援の経験があるか(創業計画書の作成、日本政策金融公庫や信用金庫とのやりとりに慣れているか)
- 開業前後の届出の段取りを説明できるか(何を、いつまでに出す必要があるかを最初に整理してくれるか)
- 開業後の月次まで見据えた提案か(融資が下りたら終わり、になっていないか)
融資の審査論点は 開業融資が通らない理由、開業全体の流れは 開業支援 にまとめています。
REDISH の場合
REDISH は飲食店向けの支援実績 1,000 件以上、税務業務は飲食店を専門とする提携税理士法人が担当します。POS・金融機関連携と LINE での領収書送付を前提に記帳フローを設計しており、月額 1 万円〜(税別)。サービス範囲と料金は REDISH 税務 を正本としてください。
よくある質問
飲食店に詳しい税理士の見分け方は?
面談で原価率・人件費率・業態差の話が具体的に出てくるかを見てください。上記3軸(実績・連携・相談)の質問例がそのまま判断材料になります。
近所の税理士で足りますか?
対面の頻度を重視するなら地理的な近さは有効です。一方で、記帳の速さは連携と運用設計で決まるため、距離だけで決めると月次の遅れは解消しないことがあります。
POS 連携は必須ですか?
必須ではありません。ただし取引件数が多い店ほど効果が大きく、現金以外の決済が3種類を超えたあたりから、突合の手間が目に見えて増えます。
顧問料が高いか安いかは、何で判断すればよいですか?
金額単体ではなく「含まれる範囲 ÷ 金額」で見てください。目安は 飲食店の税理士費用の相場 にまとめています。
紹介サービスは使うべきですか?
手段の一つです。複数の候補を短時間で集めたいときには有効ですが、最終判断は本記事の3軸で行ってください。
依頼するメリットが自分の店にあるか分かりません
雇用・借入・取引量の3つが増えるほどメリットは大きくなります。判断材料は 税理士に依頼するメリット で整理しています。










